ホーム  >  2. レポート  > プロジェクト > ◆プロジェクトとは何か?

仕事の種類をザックリ分類すると、「プロジェクト型」「非プロジェクト型」という2つのタイプに整理できます。この2つは、仕事の進め方から成果の出し方まで--つまり「マネジメント」の方法がまったく異なります。

 
ですから、きちんとした定義が必要になります。定義を曖昧にしたまま話を進めると、混乱するからです。プロジェクトマネジメントの話を始める前に、「プロジェクトとは何か?」について考えてみましょう。

「非プロジェクト型の仕事」のことを、「定常事業活動」と言ったり、単に「オペレーション」と言ったりします。ここでは、わかりやすく「オペレーション」と呼びます。

 
◇プロジェクトの仕事
 
「プロジェクト」と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは--NHKの“プロジェクトX 挑戦者たち”ではないでしょうか(2005年12月で番組終了)。
黒部ダム、霞ヶ関ビル、瀬戸大橋、青函トンネル、自動車、家電・・・“ものつくり日本”の象徴です。

中島みゆきさんの“♪地上の星よ”を聴くだけで、うるうるする人もいるでしょう。私もそうです。ああいうのにはめちゃくちゃ弱い。結婚式と同じで、泣かせるように泣かせるように話をもっていっていることは分かっていても・・・やっぱし泣いてしまう。大の苦手です。

あるいは、新製品や新サービスの開発、新規事業や新会社の立ち上げ、組織改革、システム開発、調査研究、コンサルティングなどをイメージする方もいると思います。
 
私の業界では、広告やPRのキャンペーン、イベント、博覧会、CMなどのクリエイティブ制作、パンフレットやポスター、映像などの制作、あるいはマーケティングリサーチ、生活者動向調査・・・などになります。
 
例えば、社内に「○○委員会」などが臨時に設けられ、検討結果のレポートを役員会に提出する、といったことがあります。人事評価制度検討委員会、あるいは将来ビジョン策定委員会・・・。これらもプロジェクト型の仕事です。報告が終わったら、プロジェクトは解散します。

日常生活に即したケースでは、例えば、お父さんが子どもと一緒に、日曜大工で犬小屋を作る。設計図を描いて、材料を集めて、親子で作業を分担して、土日の2日間で完成させる…これなんかも立派なプロジェクトです。他にも、お客さんを呼んでホームパーティを開く、一週間の家族旅行を企画するといったことも、プロジェクトでしょう。--ここでは、「仕事」に限って話を進めます。

では、プロジェクトと、プロジェクトではない仕事(=オペレーション)では、何が違うのでしょうか?
以下では、「PMBOK(ピンボック)」というガイドブックを参考にしながら、プロジェクトとは何か?について整理します。

【参考図書】・・・・・「PMBOK」のフルスペルは「Project Management Body of Knowledge」。日本語タイトルは「プロジェクトマネジメントの知識体系」。米国プロジェクトマネジメント協会(PMI:Project Management Institute)が提唱する、プロジェクトマネジメントのためのフレームワーク--プロジェクトを実施する際の基本的な考え方、手順--をまとめたもので、事実上の国際標準になっています。1996年に改訂版が発行され、4年に一回、オリンピックの開催年に版を重ねており、2004年10月に第三版がリリースされています。--(財)エンジニアリング協会が日本語版を発行しています。・・・・・


1) プロジェクトの期間(有期性)
 
プロジェクトの仕事は、期間が限られています。つまり、始まりと終わりが明確に示されている仕事がプロジェクトです。
一方、オペレーションの場合は、基本的に期限は限られていません。企業が続いている限り、あるいは事業が続いている限り、ずっと実施されるものです。
 
【期間】
プロジェクト  有期性(始まりと終わりがある)
オペレーション 継続性(ほぼ永久に繰り返す)

 
たとえば、何かの新製品を開発し市場投入する場合を考えて見ましょう。
新製品を企画し、設計し、プロトタイプをつくり、市場調査を行い、社内プレゼンを行って、役員会で開発にGOが出る。そして量産の準備に入る--ここまでがプロジェクト
実際の量産体制に入ると、オペレーションの段階になります。調達・製造・販売などのステップを繰り返しながら、その製品が生産中止になるまで、オペレーションは続きます。
 
他にも例を考えてみましょう。
日常のセールス活動はオペレーションですが、たとえば3ヶ月間の販促キャンペーンといった場合には、期間が限られているのでプロジェクトになります。
最初に名刺をデザインして印刷するのはプロジェクトですが、その後増刷するのはオペレーションになります。

もっと分かりやすい例でいえば、「結婚式」はプロジェクトで、「結婚生活」はオペレーション、ですね。--「結婚式」は、結婚を決めてから式を挙げるまでの(有期的な)プロジェクトで、「結婚生活」は、結婚してから夫婦どちらかが亡くなるまで、あるいは離婚して分かれるまでの(継続的な)オペレーションになります。--ですから、よく言われるように、結婚式は恋愛というプロジェクトの「ゴール」であると同時に、その後の、幸せな家庭を築いていくというオペレーションの「スタート」になるわけです。

プロジェクトは最初から、「いつ終わる」という期限が定められてスタートします。
終了時点とは、プロジェクトの「目的が達成されたとき」が理想ですが、ときには、目的が達成される見込みがなくなり、プロジェクトが「放棄されたとき」にも終了します。
 
プロジェクトの期間は、何年にもわたる長期のものもあれば、数日間で終わる短期のものもあります。
しかし、すべてのプロジェクトに共通しているのは、必ず終結時点があるということです。いったん開始されたら永久に続く、というプロジェクトはありません。その場合はオペレーションになります。
 
プロジェクトは、「納期」というゴールを目指してマネージされます。
そして、「納期」から逆算して、すべてのスケジュールが組み立てられます。
「納期」と「スケジュール」は、プロジェクトマネジメントの重要なポイントになります。
 
2) プロジェクトの成果(独自性)
 
プロジェクトによって生み出される成果やサービスには、一つとして同じものはありません。唯一無二の成果を創出すること--今までに無い新しいものを創造することが--プロジェクトの目的でありミッションです。そのためにプロジェクトは遂行されます。
したがって、オリジナリティの創出をどのように実現するかということが、プロジェクトマネジメントの重要なポイントになります。
 
【成果】
プロジェクト  独自性(唯一無二の成果を創出)
オペレーション 反復性(類似物の生産を繰り返す)

 
同じものを繰り返し作り出す、あるいは同じことを繰り返すのであれば、それはオペレーションになります。
新製品や新サービスを設計する仕事ならプロジェクトですが、その設計にもとづいて製造したり、サービスを提供したりするのはオペレーションになります。
同じものを同じやり方で、繰り返し作り出したり実行したりする仕事の場合は、オペレーションになるわけです。
 
時には、成果物に類似点があったり、反復しているように見えたりして、プロジェクトなのかオペレーションなのか、分類に迷うことがあります。
 
注文住宅の建設を考えてみましょう。同じ工務店で似たような家がたくさん作られていた場合、家を建てるという仕事は、一見オペレーションのように思えます。
しかし、施主が違えば、どんな家にしたいかとい要望はそれぞれ異なり、設計図は別のものになります。また、たとえ似たような設計図であったとしても、環境や状況が変われば違ってくるはずです。したがって、この場合は一軒一軒が個別のプロジェクトになります。
 
逆に、毎月末の経理処理や、年度末の決算処理などの場合、当然、毎月・毎年の経費や売上などの金額は異なります。しかし、処理する仕事のやり方そのものは、ほとんど同じです。毎月・毎年同じやり方を繰り返します。ですから、この場合はオペレーションになるわけです。

・・・・・

このように、「独自性」「有期性」が、プロジェクトの2大特徴です。
この2つを中心にして、さらにいくつかの特徴が派生することになります。
 
3) プロジェクトの組織(チーム)
 
プロジェクトもオペレーションも、同じ人間によって遂行されるものです。
しかし、それぞれの組織形態は違います。
 
プロジェクトの組織は、基本的には、そのプロジェクトの目的を達成するために必要なメンバーを、さまざまな部署や組織から召集してスタートし(独自性)、プロジェクトが終われば解散します(有期性)。したがって、その組織は「一時的」なものです。
しかし、オペレーションの場合には、配置転換や組織変更があるまで、ほぼ同じ「固定的」なメンバーで、業務は繰り返し遂行されます(継続性/反復性)。
 
【組織】
プロジェクト  一時的(異なる組織のメンバー)
オペレーション 固定的(同じ組織のメンバー)

 
プロジェクトは、組織のあらゆる階層で遂行されています。
一つの部門や組織内で完結することもありますが、多くの場合、プロジェクトは部門を越えて組織横断的に行われます。
なぜなら、既存の部門とそこに属する人材だけでは仕事が完結しない場合に、プロジェクトが求められるからです。(もちろん、研究所のように組織のミッション自体がプロジェクト型の場合もありますが)。
 
さらに、ジョイントベンチャー(共同受注・遂行方式)や、パートナリング(顧客・コントラクター間の包括プロジェクト遂行契約)のように、複数組織が連合で遂行することもあります。私の業界では--クライアントが代理店に発注し、代理店の担当者がそのプロジェクトに必要とされる人材を社内外から集めて組織し遂行する--パートナリングがほとんどです。
 
プロジェクトチームは、その目的を遂行することのためにのみ編成された、独自のものです。また、プロジェクトが遂行される期間だけの一時的なチームです。
チームのメンバーが招集され、プロジェクトが立ち上がると、彼らは本籍の組織や部署を離れて(あるいは兼務で)、プロジェクトが実行される期間一時的に参画することになります。
プロジェクトチームは、プロジェクトが終結した時点で解散し、チームメンバーは配転され、本籍に戻る(兼務が解かれる)ことになります。プロジェクトチームは、プロジェクトの終結を越えて存続することはめったにありません。
 
この点が、オペレーションにおける固定的なチームとの大きな違いです。
 
プロジェクトのメンバーは、いつも顔をあわせている同じ組織や同じ部署の仲間ではありません。「初めまして」--がほとんどです。「初めまして。今回このプロジェクトに参加することになりました△△の○○と言います。よろしくお願いします・・・」。
 
普段のマネジメントとは勝手が違います。戸惑うことが多いです。
メンバー同士も最初はギクシャクします。「おいこら!」とか、「よう!」は通用しません。
 
でも、これが、プロジェクトです。重要なポイントです。
 
異なる組織のメンバーが集まり、一定期間、力をあわせて仕事をする--「チームワーク」が、プロジェクトマネジメントの基本です。
 
4) プロジェクトの資源(リソース)
 
どんな仕事でも、人・モノ・金・時間といった資源(リソース)には制約があります。無制限に使うわけには行きません。
プロジェクトでもオペレーションでも、ムダ・ムラ・ムリを極力無くし、仕事は効率的に遂行する必要があります。「リソースマネジメント」です。
 
プロジェクトとオペレーションでは、リソースマネジメントの「範囲」が違います。
プロジェクトでは、そこで必要とされる資源に限って、プロジェクトの終了までの間(有期性)、他の資源とは別に、単独で(独自性)マネージすればよいのですが、オペレーションの場合には、そういうわけにはいきません。
オペレーションでは、四半期・半期・通期の計画、あるいは中長期計画といった形で、組織全体、グループ企業全体について、マネージしなければなりません。
 
しかも、プロジェクトのリソースマネジメントは、オペレーションのそれに含まれることになります。
ですから、年度を越えるプロジェクトの場合、少々ややこしくなるわけです。プロジェクトとしては途中でも、組織としては年度決算でいったん締めなければならない、といったことが生じるのです。やり繰りが必要になります。
 
【資源】
プロジェクト  限定的(プロジェクト内で管理)
オペレーション 全体的(組織全体で管理)

 
ほとんどの資源は、お金に換算されてマネージされます。
プロジェクチームのマンパワーも、最終的には人件費に換算されます。メンバーの人数も、予算によって制限されます。外注先や外注内容を決めるのも予算次第。どんなプロジェクトルームを借りられるかも、予算次第です。
 
「投資金額」「受注金額」など、呼び方はそれぞれですが、とにかく--限られたプロジェクト予算をやり繰りしながら、納期までにやり終えることが、プロジェクトマネジメントの重要なポイントになります。
 
5) プロジェクトの業務
 
具体的に「何を、いつ、どのようにやるか」といった形にブレイクダウンされた仕事のことを、「業務」と定義してみましょう。
どんな種類の仕事でも、「業務」は、「発生業務」「定期業務」「計画業務」の3つのタイプに分類されます。
 
「発生業務」とは、相手の都合で発生する業務のことです。お客さまが来店したから応対する、注文が入ったので処理する、クレームが入ったので対応する・・・。
「定期業務」とは、決められた時に繰り返し実施される定型業務のことです。エレベーターの定期点検、水道の定期検針、定期健康診断、あるいは月末の経理処理など・・・。
「計画業務」とは、自分たちで業務と分担を決め、スケジュールと予算を立て、文字通り--計画的に実施する業務のことです。販売計画、財務計画、調達計画、あるいは、営業戦略、マーケティング戦略、コミュニケーション戦略・・・。
 
プロジェクトで行われる業務のほとんどは、「計画的」かつ非定型の業務です。
オペレーション業務の多くは、「発生的」あるいは「定期的」な定型業務になります。
 
【業務】
プロジェクト  計画的(非定型の計画業務)
オペレーション 発生的(定型の発生/定期業務)

 
もちろん、オペレーション業務も、年間計画や目標管理など、PLAN-DO-SEEのステップで計画的に実施されていますし、プロジェクトにも突発の発生業務や一週間ごとの進捗会議といった定期業務もあります。
ですから、「主たる業務のタイプは?」ということです。
 
このようなことから、プロジェクトにおける最も重要なマネジメントは「進捗管理」である、と言われるのです。

・・・・・

最後に、まとめて整理してみましょう。

プロジェクトとは、
独自の成果物またはサービスを創出するために、
異なる組織のメンバーが集まり、
決められた期間と、限られた予算のもとで、
計画的に実行される活動
と定義することができます。

そして、このような活動を計画し、何とかやり繰りしながらスムースに進め、やり遂げていくことが「プロジェクトマネジメント」です。

プロジェクト
オペレーション
【期間】
有期性(始まりと終わりがある) 継続性(ほぼ永久に繰り返す)
【成果】
独自性(唯一無二の成果を創出) 反復性(類似物の生産を繰り返す)
【組織】
一時的(異なる組織のメンバー) 固定的(同じ組織のメンバー)
【資源】
限定的(プロジェクト内で管理) 全体的(組織全体で管理)
【業務】
計画的(非定型の計画業務) 発生的(定型の発生/定期業務)


(芝)