ホーム  >  2. レポート  > プロジェクト > ◆プロジェクトチーム②(チームワーク)

どんなにすばらしいリーダーやマネジャーがいたとしても、また、どんなにすばらしいプロジェクト計画であったとしても--チームワークがよくなければ、プロジェクトはうまくいきません。

 
◇プロフェッショナル
 
ずいぶん古い本ですが、国分康孝先生の書かれた『チームワークの心理学』(1985/10 講談社現代新書)という本があります。その本の中で、「チームワーク」が定義されています。
 
   チームワークとは自分の属する集団の目標達成のために、
   各自が黙々と自分の任務を遂行している状況のことである。
   仲間とけんかしてもよい。要は自分のなすべきことをきちんとすることである。
   それがチームワークである。
 
これはプロですね。プロフェッショナル。
 
   人の和があり、なおかつチームワークがあればそれにこしたことはない。
   しかし、人の和があっても、必ずしもチームワークがよいとは限らない。
 
そのとおりですね。「チームワークがいい」というのは、「仲がいい」ということではない。仲が良いか悪いかはわからないけれども、みんなそれぞれ自分の仕事はきちんとやっている--それが、チームワーク。
 
プロジェクトチームとは、そもそも、そのプロジェクトを遂行するために最適なメンバーで組織されたものです。プロフェッショナルが集められているのです。もともとが、そういうチームなのです。少なくとも、その前提で運営されるものです。
もちろん、好きな仲間と和気あいあいで仕事ができれば、それにこしたことはありません。仕事ができた上で、なおかつ仲がよくなれれば、もっといいわけです。
しかし、「あいつが嫌いだから仕事できない」というのはプロではない。というか、大人じゃない。「あいつとは口もききたくない」では支障をきたす。仕事に必要なコミュニケーションはきちんと行う。

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そうは言っても、ですよ。なかなかできないです。
「あいつとは、どうやってもダメだ」・・・「相性」ってありますからね。
 
プロジェクトの途中で、喧嘩になったり、口論になったりすることもあります。
「雨降って地固まる」になることもあれば、そのままどちらかがチームを去ることもある。何とか騙し騙し進めて終了することもある。
二人ペアだとダメだけど、もう一人バッファになる人がいて三人だとうまくいくとか、そういう場合もあります。
 
それぞれがプロジェクトのドラマです。人間関係のドラマ。
とにかく、「このプロジェクトを何とかしよう」という一点で、みんなの合意があれば、とりあえずは何とかなるものだと思います。
 
◇チームワークの原点
 
もう一つ、重要なポイントがあります。同じ『チームワークの心理学』に書かれてあることなのですが、忘れられない一節がありました。
それは、「チームワークの原点は、家事分担にあり」というものです。
 
子供のころに家事の手伝いがしっかりできていた人は、大人になってから、きちんとチームワークができる、というのです。
どういうことかというと--家事分担というのは、基本的には誰から命令されなくても、たとえば、お母さんが食事の支度で忙しそうにしていれば、自分はお風呂の掃除をしておこうとか、洗濯物を取り込んでおこうとか、あるいは自分の部屋の掃除は自分でやっておくとか--要するに「今この家庭に必要なことで、自分にできることは何か」を自主的に考えて行動する--これが、きちんと家事分担ができることであり、まさにチームワークの原点だ、ということです。
 
たしかに、「家庭」を「チーム」に置き換えてみれば、そのとおりです。

【家 庭】
   お母さんやお父さんに命令されなくても、
   必要な家事の中から自分のできることを、自主的に探して行動する。

【チーム】
   リーダーやマネジャーに命令されなくても、
   プロジェクトの状況をみて、今必要なことを自主的に判断して実行する。
 
プロジェクトは、誰が何をいつまでにやる、といった分担とスケジュールを決めて進行しています。ですから、基本的には、自分の分担さえ、きちんとやっていればいいわけです。--それが基本です。
自分の分担すらまともにできないのに「人の手助けをしてあげよう」というのは、「何を言うか!わきまえろ!」です。自分の分担ができた上で、さらに必要なことがある。それが--「家事分担の精神」だと思います。
 
たとえば、誰かのスケジュールが遅れそうで困っている、あるいは、問題解決の方法がわからなくて悩んでいる人がいる・・・このような状況はよくあることです。
そんな時、「あれは俺の仕事じゃない。俺の仕事は終わった」と知らん顔をするのか、何か自分にできることを探して手伝おうとするのか・・・プロジェクトがうまくいくかどうかの秘訣は、こんなところにあるのではないでしょうか。
 
もし、「学生の本分は勉強である」と言って、何も家事手伝いをさせないで育てられたら、「俺は俺のことだけやってりゃいい」というような、チームワークの下手な大人になってしまうのではないか・・・そんな気がします。
 
◇自立した個人による真のコラボレーション
 
【依存】⇒【自立】⇒【相互依存】
 
このステップは、先にも引用したスティーブン・R. コヴィー博士の『7つの習慣』の基本構成です。「人間成長のステップ」と言い換えてもいいかもしれません。

この3つは、トランスパーソナル心理学の理論家ケン・ウィルバーがいうところの「プレ・パーソナル(前個)」⇒「パーソナル(個)」⇒「トランス・パーソナル(超個)」という「意識の進化と成長のサイクル」の概念と同じです。--詳しくは「トランスパーソナル」のカテゴリーで整理します。

【依存】状態にある人とは、どんな人なのでしょうか?たとえば・・・

   ・指示がなければ動けない。
   ・試さないですぐに人に頼る。
   ・自分の判断で仕事ができない。
   ・自分の仕事に責任がもてない。
   ・分担された仕事を一人前にこなせない。
 
【依存】状態にある人が一人でもチーム内にいるとたいへんです。
チームワークが成立しません。チームは足を引っ張られることになります。「1+1=1以下」になってしまいます。
【自立】したプロの集団であれば、「1+1=2」の結果をきっちり出すことができます。
 
依存状態の人がメンバーにいた場合、どうすればよいのでしょうか。
交代してもらう。それが無理なら、誰かのアシスタントに徹してもらうことです。
最悪は--辞めてもらう。

依存している人に限って、自分は一人前だと肩肘張ってみたり、人の意見に批判的だったりすることがあります。批判することで自分の存在を目立たせようとしている。そうすることによってアイデンティティを保とうとしているのです。本当は逆効果なのですが、本人はそのことに気づいていない場合が多いのです。
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もう、ずいぶん前のことになります。30代前半。あるリサーチ・プロジェクトのマネジャーをやっていました。
プロジェクトは大詰め段階で、レイアウトを含めた最終レポートのフィニッシュワークを社外協力会社のT君に依頼しました。T君は私の友人から紹介された人材です。「鍛えてやってください」と頼まれて。
私は、自分自身が細かい指示を出されるのが嫌なので、他人に対しても同じように、意図や目的などの大枠は示しますが、なるべく本人の自主性を尊重したいと思っています。このときも、T君には「こんな感じで」と方向性だけ示していました。
彼は「わかりました!」と言って作業に入りました。「おお、やる気あるな。何とかなりそうだな」と安心し、「よろしく」とお願いしました。
 
ところが、作業途中の確認のために持ってくる彼のレポートを、私はどうしても気に入らなくて、何度もやり直しを求めました。その都度、「ここはこんな感じの方がいいと思うけど、どう思う?」と、相変わらず曖昧な指示を出していました。
T君は根気よく、“私の指示通りに”何度も修正してきました。そうこうしているうちに・・・突然T君が、キレたのです。
「どうして、気に入らないんですか!? ぼくは言われたとおりに直しているのに!」
私はビックリしました。「えっ?」
そして怒りがこみ上げてきました。「何だとお? ふざけんじゃねえ!」
しばらく睨み合いが続きました。
「あのな、何でおれが怒っているか、わかるか?」
「わかりません!どうしてですか? 言われたとおりにやっているのに!」
「ふう・・・。あのな、おれはな、きみが“言われたとおりにしかやらない”から、怒っているんだ。“言われた以上のこと”をやってもらわないと、おれとしては頼んだ意味がないんだよ。わかるか?」

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プロジェクトのメンバーは、プロフェッショナルであることが大前提です。「いろいろ教えてください」とか「勉強させてもらいます」というのは通用しません。仕事優先ですから、そういう人の面倒は見切れないのです。
 
基本的に、プロジェクトには人を「育てる」義務はありません
プロジェクトの目的を達成することが第一に求められることすから。
 
しかし、プロジェクトを通して人が「育つ」ことは充分にあります
多くのことが学べます。プロジェクトを通して人は勝手に育つのです。
 
心理学では、「モデリング」と呼びます。要するに「物真似」です。
「学び」は「真似び」と言われますが、“できる人”と一緒にプロジェクトに参加し、そばで見て真似ながら人は育っていきます。そして一人前の【自立】状態になっていくのです。
あとは本人の意志です。「育とう」「真似よう」という本人の意思次第です。
 
【自立】の次は、【相互依存】のステージです。
自立した人同士の関係になって初めて、真の意味での「共同作業=コラボレーション」が可能になります。相互依存が成り立つのです。
相乗効果=インタラクションが生まれ、相互に共鳴し、一人一人の力以上のものが引き出され、その結果「1+1=2以上」になるのです。

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【依   存】 「1+1=1以下」
【自   立】 「1+1=2」
【相互依存】 「1+1=2以上」

 
【相互依存】の段階になって初めて、「チームワークの原点は家事分担にあり」が生きてきます。
そして、プロジェクトの「コラボレーション」は、【自立】したプロフェッショナル同士の【相互依存】によって可能になります。
 

(芝)