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良好なコミュニケーションを行うためには、〈心と技〉のバランスが必要です。
〈EQ/IQ〉と言い換えてもいいかもしれません。

 
どんなに〈心〉がこもっていても、〈技術〉がともなっていなければ、伝えたいことも伝わりません。うまく聴くこともできません。

どんなに〈技術〉を駆使しても、〈心〉が共鳴しなければ、コミュニケーションは成り立ちません。共感を得ることはできません。

それは、人間関係のコミュニケーションでも、組織のコミュニケーションでも、同じです。
 
◇良好な人間関係を築くためのコミュニケーション〈技術〉
 
相手のメッセージを受け取り、自分のメッセージを伝える・・・。
コミュニケーションは人間生活の基本です。
 
人間誰しも、いつも誰かとコミュニケーションをしています。
ですから、「できて当たり前」と思っています。誰もがやっていることだし、誰にでもできるものだと、私たちは思っています。
 
しかし、「できる」としても、「うまくできる」とは限りません。
人間関係に何か問題が発生した場合、「原因の”ほとんど”は、コミュニケーションにある」と言えるのではないでしょうか。家族関係、友人関係、恋愛関係、あるいは、職場での上司と部下の関係、経営者と社員の関係・・・。
 
良好なコミュニケーションを行うためには、それなりの〈技術〉を身につける必要があります。「コツ」と言えるかもしれません。知っているのと知らないのでは、雲泥の差があります。円滑な社会生活を送るためにも必要です。
コミュニケーションの〈技術〉を身につければ、人間関係はずいぶん改善します。
 
しかし、コミュニケーション〈技術〉は、誰もきちんとは学んでいません。家庭でも、学校でも、職場でも--誰も、習ったことはありません。誰も、私たちに教えてくれません。
それはまるで--泳ぎ方を知らないのに、突然海に放り込まれたようなものです。水を飲んだり溺れそうになったりしながら、少しずつコツをつかんでいくのが現実です。
※詳しくは心理学のコーナーで考えていきます。
 
◇コミュニケーションは〈心〉と〈心〉の共鳴
 
しかし、コミュニケーションは、〈技術〉だけでは不十分です。
もう一つの大切なもの--それは、コミュニケーションの〈心〉です。
 
コミュニケーションの〈心〉とは、一つは、「どんな気持ちで伝えるか」ということです。例えば、「感謝の気持で」とか「相手のことを理解したい」といったものもあれば、逆に「威圧して説得しよう」とか「脅威でコントロールしよう」といったものもあります。
もう一つの〈心〉は、コミュニケーションする相手に「どんな気持ちを持ってもらいたいか」ということです。心地よくなってもらいたいのか、元気ハツラツになってほしいのか、ホッとしてもらいたいのか・・・。逆に、怒らせたいのか、恐がらせたいのか・・・・・。
 
コミュニケーションは、心と心のふれあい--心と心の共鳴をベースにして、言葉や態度などを使った〈技術〉で表現されるものです。
同じ〈メッセージ〉を、同じコミュニケーション〈技術〉で聞いても、まったく違った印象を受けるのは、ベースとなる心の共鳴が違っているからです。
 
コミュニケーションの〈心と技〉--コミュニケーションの〈EQとIQ〉と言い換えてもいいかもしれませんが--それは、どちらか一方に偏ることなく、両方のバランスが必要なのです。
 
「コミュニケーションに〈技術〉は必要ない。愛(心)があれば伝わるんだ」という人もいますが、それは違います。相手に愛を伝えようと思ったら、「きちんと愛(心)を伝えることのできるコミュニケーションの〈技術〉」を身につけなければなりません。
淡々と事実を伝えるだけのコミュニケーションでは味気ないし、それこそ相手の「心」に響きません。〈心〉に響くような--コミュニケーションの〈技術〉が必要です。こちら側に「これを伝えたい」という「心」があって、それを相手の〈心〉に届けるために--そのために〈技術〉を使うのです。
 
◇〈心〉を忘れた組織コミュニケーションが目立ちませんか?
 
企業や団体などが組織として行うコミュニケーション活動にも、同じことがいえます。
〈心と技〉の両方が大切です。
 
組織コミュニケーションの〈技術〉については、コーポレートコミュニケーションやマーケティングコミュニケーション、ブランディングなど、さまざまなノウハウやセオリーがあります。
広告代理店やPR会社では、それらをメソッド化したりツール化して提供しています。企業でいえば宣伝部や広報部、IR部などは、コミュニケーションの専門技術をもった部門です。
 
では、〈心〉については、どうでしょうか。
 
実は最近--「技術にばかり走りすぎて、心を忘れていませんか?」--と言いたくなるような事例が増えているような気がします。
コミュニケーションの相手が、「心を持った人間」であることを忘れているのではないか、と思えてしまうのです。
 
例えば、やたらと顧客を「不安」にさせたり、「恐怖心」を煽ったり、あるいは「焦らせたり」して……不必要なものまで「買わせて」しまう。
「認知させる ⇒ 興味を抱かせる ⇒ 衝動を起こさせる ⇒ 買わせる」--感情のコントロール--といえばカッコいいのですが、人の心を弄んでいるとしか思えないような感じです。
一歩間違えば(というか、ほとんど)マインドコントロールや詐欺になってしまいます。
 
「あれっ?なんか変だぞ?」と思うような、セールスレターやチラシ、広告、ダイレクトメール、Emailなどを、目にしたことはありませんか?
 
「今しか買えません」 (無くならないのに…)
「限定○○名様」 (在庫はあるのに…)
「本日限り」 (なぜ明日は売らないの?)
「みんな使ってます」 (みんなって誰?)
「これだけ買えば、○○ポイントが貯まる」 (ポイントは貯まるけど財布は空っぽ…)
「○○をお買い上げの方には、さらに□□がお薦め」 (そんなこと誰が決めたんじゃ!)
 
そして、「また騙された」「ちきしょう」「また無駄遣いしてしまった」ってことになってしまう…。あるいは、「ま、(今は要らないけど)そのうち必要なときが来るに違いない」「安かったんだから、買って正解だよ」などと自分で自分に言い訳をしてしまう…。
 
実際、エモーショナル・マーケティングでは、「顧客は“買う理由”を、”買う前”に考えるのではなく”買った後”の言い訳として考える」、と認識されています。要は、「買いたい気持ちにさせればいいんだ」と・・・。
自己責任といえばそうでしょうし、騙されるほうもよくないとか、最初から買わなきゃいいのに、とも思います。それは、確かにそうです。しかし、やはり、コミュニケーションを意図する側が、いたずらに顧客の感情を煽るのは良くありません。
人間は「感情の動物」といわれています。理性とは関係ないところで感情的に行動してしまいがちです。しかし、だからといって“パブロフの犬”の実験ように、“刺激と反応”を弄ぶのは良いことではありません。
 
ところが困ったことに、たとえ〈心〉がこもっていなくても--真似した〈技術〉を駆使すれば--それなりの成果は上がってしまいます。
決して長続きはしません。どこかで破綻することは目に見えています。
しかし、最初のうちはうまくいくように見えてしまうのです。さらに、手を変え品を変えて、色んな技術を使いまわしていけば、それなりに延命していきます。
 
だから、「良くない、良くない」という正義論だけでは、問題は解決しません。
 
◇コミュニケーションを企画する人の「良心」と、陥りやすい「罠」
 
さて、そうなると、結局--コミュニケーションを企画する人間の「良心」の問題になってきます。
 
例えば、企画会議の席などで議論が白熱してくると、言葉遣いが変わり始めることがあります。

「どうしたら、商品の特徴を正確伝えることができるだろうか?」
「よい商品だと思わせるには、どうすべきか?」
「どうしたら、安心感を抱いてくれるだろうか?」
「安心感を植え付けるためには、どうすべきか?」
「どうすれば、わざわざお店に足を運んでいただけるだろうか?」
「矢も盾もたまらず店に走らせるためには、どうすべきか?」
「どうすれば、必要な人に必要だと思ってもらえるだろうか?」
「見た人の欲求を高めるためには、どうすべきか?」

企画する人間は、一所懸命に考えています。しかし、一所懸命に考えれば考えるほど--人を人として扱うことから、外れていってしまいがちなのです。
 
そして、うまくいくと--自分たちの意図したように顧客が動くと--面白いのです。
それが、コミュニケーションを企画する人間にとっての「成功」なのです。
「やった!やった!」と。
だから--加熱しがちなのです。
 
○「理解していただいた」「買っていただいた」から、
×「理解させた」「買わせた」に変わってしまいがちなのです。
それが--コミュニケーションを企画する人の陥りがちな--「罠」なのです。
 
クライアント 「いやあ、今回は、うまくいきましたなあ」
企画マン   「おかげさまで」
クライアント 「みごとに企画がはまりましたなあ」
企画マン   「ありがとうございます」
クライアント 「この炎天下(寒い中)行列しとりますよ」
企画マン   「うまく来させることができました」
  二人   「ほっほっほっ…」

“悪代官と越後屋”の会話みたいですね。
 
「わしがわしがの“我”を捨てて、お陰お陰の“げ”で生きる」--こうありたいものです。(「超老伝―カポエラをする人」中島らも (著) 角川文庫)
 
◇たとえ「青臭い」と言われても…
 
「各自の“良心”に従って企画するように!」なんてことを言うと、
「そんな甘っちょろいこと言っていると、競争に負けるぞ! 理想論だ!」
「とにかく売らなきゃダメなんだ! 買わせなきゃダメなんだ!」と、
お叱りを受けそうです。
 
ご指摘は、ごもっともです。
しかし、私はこれからも、これまで述べてきたような問題意識を持って、コミュニケーションのビジネスに携わっていくつもりです。
 
コミュニケーションの〈心と技〉(EQとIQ)のバランスの問題。
これからも、追求していきたいと思います。

(芝)